2017パラ水泳~中部大会~

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真夏の暑さに包まれた7月2日、愛知県口論義運動公園プールにて第24回中部障がい者水泳選手権大会が行われた。

 

今大会は他の地方大会とは異なり、日本知的障がい者水泳連盟の公認大会となっているため知的障がいを抱えた選手も多く出場した。

そのため総参加者数は340人にも及び、坂倉航季、津川拓也、中島啓智、林田泰河、宮崎哲らリオデジャネイロオリンピック日本代表選手も5人出場した。

今大会で最も会場を沸かせたレースは、午後に行われた男子200mバタフライだ。髙柳春貴選手が2分19秒78で泳ぎ切ると、続いて村上舜也選手が2分20秒93でゴールする。同じレースに出場した2人の選手が、2年ほど破られていなかった2分22秒17という日本記録を更新したのだ。この結果がアナウンスされると、会場内はこの日一番の大きな拍手に包まれた。

水泳というスポーツはリレーを除けば個人競技であるが、選手同士の結束は固い。実際に会場では小さな子供から年配の方まで、様々な障がいを抱えた選手たちが各々の目標を持ってレースに臨み、レース後にはプールサイドでお互いを鼓舞し合う様子が多々見受けられた。成嶋徹選手と馬場俊明選手は男子50m自由形の同じ組に出場し、ワンツーフィニッシュを飾った。2人は同じ会社の水泳部に所属しており、お互いに良きライバルとして刺激し合いながら練習を重ねている。馬場選手は「自由形に関しては自己ベストを出せた」と振り返った。この結果もお互いに切磋琢磨し合える仲間がいたからこそ出せたものなのだろう。

(左から成嶋選手、馬場選手)

 

やはり2020年に東京でパラリンピックが開催されることは、多くの選手たちにとってのモチベーションとなっているようだ。バタフライに出場した羽賀昭徒選手は「目標はやっぱり東京パラリンピック」と力強く話した。また、一緒にインタビューに応じた近藤薫選手は「まずは育成Bに上がりたい」と将来を見据えた目標を語った。

 

(左から後藤選手、羽賀選手、近藤選手)

注目したのは、女子100mバタフライ1組と女子200m個人メドレーに出場した松井ゆずか選手。彼女は現在、育成A選手に指定されており、今後のパラリンピックに向けても期待の存在だ。今大会での結果ついて「最近はテスト週間であまり泳げていなくて、タイムもそんなに満足のいく結果ではなかったので悔しい気持ちでした。」と振り返った。学業と水泳の両立に時には苦戦しながらも、高校の部活動で週4回の練習に励んでいる。今後の目標は今年12月に行われるアジアユース大会に出場し決勝に残ること、そしてできればメダルも獲得することだという。そのためにまずは今大会での「100mのバタフライで、後半にすぐ失速してしまう」という反省点を改善していきたいところだ。松井選手の区分「S9」はリオデジャネイロパラリンピック日本代表選手である一ノ瀬メイや森下友紀など多くの実力者が揃っている。そのレベルの高い争いの中で、日本を代表する選手になっていって欲しい。

 

また今回は、選手だけでなく大会を運営する方々にも注目した。

今大会で選手の表彰をずっと行っていたのは中部障がい者水泳連盟会長の西口住伸さんだ。表彰する選手を招集し、一人一人に優しく声を掛けながらメダルを手渡しする光景が印象的だった。西口会長は今もシニア選手として現役を続けながら、会長としての仕事も行っている。今大会は参加者が多かったこともあり時間が少しずつ遅れてしまうこと、また会場内が暑かったことが特に大変だったと振り返った。運営面として今後強化していきたいのは日本障がい者水泳連盟に公認される競技役員を育成すること。もちろん選手だけでなく西口会長も「2020年東京パラリンピックにぜひとも中部の選手も出場してほしい」と東京パラリンピックを見据えている。そのためには競技役員の育成など、運営面の強化も欠かせないのだ。

 

運営を支えているのは連盟や競技役員の方々だけではない。会場では多くのボランティアスタッフが活動している。学校で福祉を学んでいるという岡崎優里奈さん、中根諒香さんは、授業過程の一環としてこのボランティアに参加していた。岡崎さんは大会受付、中根さんはタイムなどを表示する機械を動かすという活動を行っていた。2人とも障がい者水泳を見たのは今回が初めてだというが、実際に見ていると健常者と変わらないくらい上手で速く、驚いたそうだ。今回のボランティアは、「正直障がいと聞くとちょっと遠い存在に感じていたのですが、こうやって関わってみると別に遠いということは無かったです。明るい人ばかりで元気をもらいました。」(岡崎さん)「たとえば、子供たちが普通に手話で会話をしていたのですが、いま授業で手話を習っているので純粋にすごいなと思いました。」(中根さん)と振り返るように、普段あまり関わることのない「障がい者スポーツ」に触れたことは良い経験になったようだ。2人のようにボランティアとして、または観客として「障がい者スポーツ」に触れることは必ず良い刺激をもたらしてくれるだろう。

(左から岡崎優里奈さん、中根諒香さん)

 

この取材では、高みを目指す選手とそれを支える方々の両方に注目することが出来た。多くの選手が目指す東京パラリンピックが盛り上がるためには、選手の努力も必要だが、それ以上に多くのサポートが必要になってくる。初めて障がい者水泳を見たという2人のボランティアスタッフのように何らかの形で、一人でも多くの人が「障がい者スポーツ」に触れ、それを盛り上げていく一員になっていくことを願いたい。

広報インターン 伊藤 史織 (慶応スポーツ新聞会)