2017パラ水泳〜関東大会〜

 

2017年6月18日、東京都多摩障害者スポーツセンターで第31回関東身体障がい者水泳選手権大会が行われた。

参加人数は234名と過去最高の数だ。今回の大会では大会記録が38、大会新記録が47も叩き出され、高いレベルの戦いが繰り広げられた。

 

十人十色水泳

時計の針が午前10時を指したと同時に、プログラムナンバー1番の女子400メートル自由形1組目の選手紹介のアナウンスが会場に響き渡った。スタート台に乗る選手たち。身体障がい者水泳のスタートの仕方は選手によって異なる。ただ、静止状態でスタートすることが義務付けられている。立った状態でスタートする選手もいれば、介助者に体を支えてもらう選手、水中からスタートする選手もいる。同じスタートラインに並んでいても障がいの種類、不自由な部位が異なるので泳ぎ方もスピードもかなりのばらつきがある。しかし、目指すゴールは皆同じだ。400mにもなると最後まで泳ぎきれない選手もいる。個人が持てる最大限の力を目の前にある1本のレースに込めるのだ。

        

スタートの合図と同時に飛び込む選手 バタフライで水中に上がってくる 選手

 

 

学校と水泳。両立を頑張る川辺多恵選手

開会式で選手宣誓をした川辺多恵さんは「今日の種目を短水路で泳いだのは初めてだったんですけど、ベストを出すことができて素直に嬉しいです」と試合を振り返る。川辺選手は日本代表選手の“育成”と“強化”のチームがある中、育成Bチームに指定されている。歯科衛生士の専門学校に通いながら、週8回(朝練習2回、午後練習6回)水泳の練習に励む。今のチームより1つ上の育成Aにあがるためには、100mで1秒縮める必要がある。「後半の50mで失速してしまわないように、次の大会までしっかり泳ぎこみたいです」といき込んだ。

選手宣誓をする川辺多恵選手   パラッシーを持つ川辺多恵選手

 

 

選手を支えるタッパー

43のプログラムが順々に繰り広げられていく中、私が注目したのは視覚障がいがある選手にターンのタイミングを知らせる“タッパー”。身体障がい者水泳の大会に足を運んだことがある人なら、1度は目にしたことがあるだろう。しかし、存在には気づいていても詳しい役割は知らないという人は多いのではないだろうか。そこで今回は、富田宇宙さんのタッパーを務めている風間みどりさんに詳しく教えてもらった。タッパーは全盲の選手には必ずつき、弱視の選手の場合はレベルや個人の感覚によってつくかどうかが決まる。もし、全盲の選手にタッパーがつかなかった場合はその選手が失格になる。ターンのタイミングを視覚的につかむのが難しい選手のためにタッパーが選手の体に棒で触れることで感覚的にタイミングを知らせる。(このことをタッピングという)また、タッパーが棒でたたいていい回数は決まっている。2回目までは許されるが3回振りかざしてしまうと選手が失格になってしまう。ストップウォッチを首からかけてタッピングを行うのも違反行為だ。レース中にコーチングをしたとみなされる。ただ選手の“壁” となって、レースを裏から支えるなくてはならない大切な存在である。風間さんは「タッパーをするようになってから、自分もレースに参加しているんだという気持ちが増して楽しい」と笑顔で話してくれた。富田選手のタッパーは現在9名いて、大会ごとにスケジュールを組んでいる。親族、コーチだけでなく、少しでも興味がある人なら誰でもできるそうだ。普段の練習でタイミングをつかみ、本番に挑む。選手個々や泳法によってタイミングやたたき方が異なるので、事前の準備が大切になってくる。是非興味のある方は挑戦してほしい。よりパラスポーツを身近に感じることができるだろう。

          

タッピング棒を持つタッパー  タッピングをするタッパー

世界に羽ばたく森下友紀選手

女子200m個人メドレーで自身が持つ大会記録を更新した森下友紀選手は今後の目標について「(今日の午後にある50mバタフライでは)ドイツの遠征で100mバタフライに出るので、そこに繋がるように意識して泳ぎたい」と力強く話してくれた。秋に行われる世界選手権は高地で行われるため、場所に順応する体作りが必要になってくる。厳しい練習を乗り越え、世界で活躍してくれることを期待したい。

レース後にインタビューを受ける森下選手

 

これからのパラスポーツ

森下選手のように世界に羽ばたく若い世代の選手が続々と頭角を現している。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本全国がスポーツであつくなっている。しかし、まだまだパラスポーツへの関心が低いのは事実である。もっと多くの人にパラスポーツの魅力を知ってもらい、国籍、性別、障がいの有無を超え皆が1つになり、同じゴールに向かってあつくなりたい。

平泳ぎで息継ぎをする選手     タッピングをする風間さん

 

 

広報インターン生 前田さつき (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~九州大会~

真夏のような日差しが照りつけた6月18日、佐賀県総合運動場内水泳場にて第28回九州障がい者水泳選手権大会が開催された。多くの協賛の支えのもと、クラスや年代の異なる様々な選手がそれぞれの目標を持って挑んだこの大会は、大いなる盛り上がりを見せた。

16年の日本身体障がい者水泳選手権大会、ジャパンパラ水泳競技大会でともに200m個人メドレー、100m背泳ぎの二冠を達成した実績を持つ保田星願選手。
東京パラリンピックでの活躍が期待される19歳だ。今大会では100m自由形(S9)、100m背泳ぎ(S9)、50m自由形(S9)の3種目に出場。最も力を入れてきたという100m背泳ぎは1分12秒39。「スピード系の練習をしてきて前半は良かったが(35秒53)、後半その分体力がなくなってしまった。」と100分の6秒ベストに届かなかった悔しさをあらわにした。

東京パラリンピックにむけ、同じく期待の前田一成選手。今大会100m自由形(S10)、50mバタフライ(S10)、50m自由形(S10)に出場し、すべてで自己ベスト、大会新記録をたたき出した。調子は絶好調。100m自由形は1分3秒17と自己ベストから1秒ほどタイムを縮め、「自分でもびっくりしているぐらいです」と笑顔を見せた。保田選手とは高校生のときから合宿などでも一緒になり、「クラスは違うけど良いライバル」。レース後にはハイタッチを交わす姿も見られ、仲の良さをうかがわせた。

ジャパンパラにむけ、両選手ともに目標は「日本新記録」と口を揃えた 。
これからもお互い切磋琢磨しつつ、この障がい者水泳を盛り上げる若きポープに
期待したい。

 

一方、身体障がい者水泳を長い間引っ張ってきたベテランの梶原紀子選手。96年のアトランタパラリンピック50m平泳ぎ(SB4)で金メダルを獲得した実力者だ。今大会は体調を崩し練習が思うようにできなかったことで体が重かったという。
しかし「ジャパンパラの標準タイムは切れたので必要最低限のことはできた」と振り返った。

そんな梶原選手にとって欠かせないのが車椅子だ。2020年の東京パラリンピックの影響で障がい者やパラスポーツに対する意識は徐々に高まってきているが、それでもその車椅子によってまだまだ不自由を感じることが少なくないという。たとえば、試合の行われる会場の問題だ。プールの外にはスロープが設置されていても、プールのなかに段差があるなど、パラスポーツを行える会場は限られる。

パラスポーツに対して多くの人はどのようなものかはほとんど知らず、少し怖いというイメージさえ持っているのではないだろうか。私もそうであった。
しかし、ぜひ一度会場に足を運んでみてほしい。選手たちはみんな私 たちと少しも変わらずただひたむきにベストを目指しレースに挑んでいる。障がいを持っていることを忘れさせるくらいその顔はいきいきとした表情そのものだ。この雰囲気を肌で感じ、パラスポーツがより多くの人に身近な存在になってくれることを願う。

 

 

広報インターン生 太田彩恵 (慶應スポーツ新聞会)