ジャパンパラ1日目

2017パラ水泳~ジャパンパラ~一日目

 

9月2日から3日にかけて東京辰巳国際水泳場にてジャパンパラ水泳競技大会が行われた。各地の地方大会を勝ち抜いてきたトップアスリートたちが肩を並べる国内最高峰のこの大会。1991年に始まり今年で27回目を迎える。今年は初めて海外からの招待選手が5人参加し、世界の強さを見せつけた。海を越えて互いに切磋琢磨し、2020年の東京パラリンピックをより一層盛り上げようという思いが見て取れる。スペインのミシェル選手は日本の大会の印象を聞かれると、「とても温かいし、素晴らしい日本の選手と泳げて刺激になった」と語った。

この日400m自由形で4分39秒71のアジア新記録をたたき出した富田宇宙選手。従来のアジア記録を2秒更新するタイムであった。その大きな要因が、S12からS11へのクラス変更である。より重い障がいのクラスに認定されたのだ。3歳から水泳を始めた富田選手。高校2年時から徐々に視力が低下し、卒業時には競技継続困難な状態となった。その後競技ダンスにも手を伸ばすも再び水泳を始めることを決意。「進行性の障がいなので、いずれクラスが変わることは分かっていました。しかし、もうかという感じです」と戸惑いも口にしたものの、「なかなか障がいが悪化して喜ぶ人はいないと思うんですけど、幸いこの競技をやらせてもらっているので、この結果を前向きにとらえたい」と明るく語ってくれた。これにより、日本を代表する木村敬一選手と同じクラスとなり、最大のライバルとなったことは間違いない。ハイレベルな日本人対決からも目が離せない。

また今大会は9月30日から10月6日にかけてメキシコで行われるワールドパラ水泳選手権大会に出場する全24名の日本代表選手が紹介され、会場全体から激励を受けた。北野安美紗選手と並び14歳という最年少で日本代表に選ばれた宇津木美都選手は「最年少ということでチーム全体を明るくできる存在になれたらいい」とチーム全体のことを語ってくれた。

この世界選手権は高地での開催となるため、障がい等から来る高地での競技リスクも考慮され、派遣を見送られた選手もいる。選手たちが口を揃えて語ったのは高地での特殊なトレーニングの必要性だ。酸素が薄い中で、最大限のパフォーマンスを発揮するため、それぞれが高地トレーニングを強化している。

世界選手権を見据えたレースをする選手、将来日本代表に選ばれることを目標に記録と戦う選手、地方大会との違いを噛みしめこの大舞台を楽しむ選手。今回も多種多様な選手が活き活きと輝く姿を見ることができた。

 

広報インターン生

太田彩恵(慶應スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~近畿大会~

7月2日和歌山県秋葉山公園県民プールにおいて第28回近畿身体障がい者水泳選手権大会が行われた。近畿大会は毎年開催地が異なるが、和歌山県で行われたのは今回が初となる。

ベルリンで7月上旬に世界大会 があったこともあり、リオ デジャネイロパラリンピックを経験した選手の出場は少なかった。しかし、その中でリオ出場の笠本明里は1レース目となる100m自由形で自身も納得の泳ぎを見せ大会新記録を打ち立てる。

神戸楽泳会のメンバーとして出場したフリーリレー・メドレーリレーでもその実力を発揮し、1位フィニッシュに貢献した。

また、国際大会の経験豊富な江島大佑も出場。50m自由形と100m自由形で大会新記録を更新してみせた。

今大会では身体障がいを持つ選手だけでなく、聴覚障がいをもつ選手も出場した。世界大会に出場した経験をもつ中川裕介は100m平泳ぎで大会新記録を更新するも、「スタートの浮き上がりに失敗して自己記録は打ち破れなかった」と悔しさを見せた。

和歌山県で開催されるのは初めてということで運営の難しさもあったという今大会。しかし新たな場所での開催は裾野の広がりが進んでいる証であるともいえるだろう。さらに、開催された秋葉山公園県民プールは国体の開催によって4年前に改修されたばかりの新しいプールで、設備も非常に充実している。レッジやバックプレートが導入されているだけでなく、スタート時にプールサイドのライトが発光するようになっている。聴覚に障害のある選手はスタートを見ることでしか判断できず、スターターが持つ光るピストルを見なければならない。しかし、プールサイドにライトがあれば見ることが必要なくなり、スタートがしやすくなるのだ。「記録が出やすい」と中川選手も笑顔を見せた。

笠本・中川両選手も世界レベルの施設と認めるこのプールでの泳ぎが好記録に繋がることは選手の励みになっている。初めての試みは多くのメリットを産みだした一方で、まだまだ問題はあると近畿身体障がい者水泳連盟の杉山会長は指摘する。人々の持つ障がいは様々であるのに、柔軟な対応ができていなかったことを挙げて自分たちのやり方とずれがあったという。来る2020年に向けてマスコミでの注目度が上がり、選手たちが「アスリート」としてとらえられつつある中で2020年のその先を見据えることの重要さにも触れ、「競技人口の高齢化は止まりつつあるけれども、もっと競技人口が増えてほしい」とも話した。

競技者が2020年とその先へ挑戦し続けていくのであれば、競技者だけでなく周りの我々も2020年に向けて挑戦していかなければならないと気づかされた取材だった。

 

 

 

広報インターン生 尾崎崚登 (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~中部大会~

真夏の暑さに包まれた7月2日、愛知県口論義運動公園プールにて第24回中部障がい者水泳選手権大会が行われた。

 

今大会は他の地方大会とは異なり、日本知的障がい者水泳連盟の公認大会となっているため知的障がいを抱えた選手も多く出場した。

そのため総参加者数は340人にも及び、坂倉航季、津川拓也、中島啓智、林田泰河、宮崎哲らリオデジャネイロオリンピック日本代表選手も5人出場した。

今大会で最も会場を沸かせたレースは、午後に行われた男子200mバタフライだ。髙柳春貴選手が2分19秒78で泳ぎ切ると、続いて村上舜也選手が2分20秒93でゴールする。同じレースに出場した2人の選手が、2年ほど破られていなかった2分22秒17という日本記録を更新したのだ。この結果がアナウンスされると、会場内はこの日一番の大きな拍手に包まれた。

水泳というスポーツはリレーを除けば個人競技であるが、選手同士の結束は固い。実際に会場では小さな子供から年配の方まで、様々な障がいを抱えた選手たちが各々の目標を持ってレースに臨み、レース後にはプールサイドでお互いを鼓舞し合う様子が多々見受けられた。成嶋徹選手と馬場俊明選手は男子50m自由形の同じ組に出場し、ワンツーフィニッシュを飾った。2人は同じ会社の水泳部に所属しており、お互いに良きライバルとして刺激し合いながら練習を重ねている。馬場選手は「自由形に関しては自己ベストを出せた」と振り返った。この結果もお互いに切磋琢磨し合える仲間がいたからこそ出せたものなのだろう。

(左から成嶋選手、馬場選手)

 

やはり2020年に東京でパラリンピックが開催されることは、多くの選手たちにとってのモチベーションとなっているようだ。バタフライに出場した羽賀昭徒選手は「目標はやっぱり東京パラリンピック」と力強く話した。また、一緒にインタビューに応じた近藤薫選手は「まずは育成Bに上がりたい」と将来を見据えた目標を語った。

 

(左から後藤選手、羽賀選手、近藤選手)

注目したのは、女子100mバタフライ1組と女子200m個人メドレーに出場した松井ゆずか選手。彼女は現在、育成A選手に指定されており、今後のパラリンピックに向けても期待の存在だ。今大会での結果ついて「最近はテスト週間であまり泳げていなくて、タイムもそんなに満足のいく結果ではなかったので悔しい気持ちでした。」と振り返った。学業と水泳の両立に時には苦戦しながらも、高校の部活動で週4回の練習に励んでいる。今後の目標は今年12月に行われるアジアユース大会に出場し決勝に残ること、そしてできればメダルも獲得することだという。そのためにまずは今大会での「100mのバタフライで、後半にすぐ失速してしまう」という反省点を改善していきたいところだ。松井選手の区分「S9」はリオデジャネイロパラリンピック日本代表選手である一ノ瀬メイや森下友紀など多くの実力者が揃っている。そのレベルの高い争いの中で、日本を代表する選手になっていって欲しい。

 

また今回は、選手だけでなく大会を運営する方々にも注目した。

今大会で選手の表彰をずっと行っていたのは中部障がい者水泳連盟会長の西口住伸さんだ。表彰する選手を招集し、一人一人に優しく声を掛けながらメダルを手渡しする光景が印象的だった。西口会長は今もシニア選手として現役を続けながら、会長としての仕事も行っている。今大会は参加者が多かったこともあり時間が少しずつ遅れてしまうこと、また会場内が暑かったことが特に大変だったと振り返った。運営面として今後強化していきたいのは日本障がい者水泳連盟に公認される競技役員を育成すること。もちろん選手だけでなく西口会長も「2020年東京パラリンピックにぜひとも中部の選手も出場してほしい」と東京パラリンピックを見据えている。そのためには競技役員の育成など、運営面の強化も欠かせないのだ。

 

運営を支えているのは連盟や競技役員の方々だけではない。会場では多くのボランティアスタッフが活動している。学校で福祉を学んでいるという岡崎優里奈さん、中根諒香さんは、授業過程の一環としてこのボランティアに参加していた。岡崎さんは大会受付、中根さんはタイムなどを表示する機械を動かすという活動を行っていた。2人とも障がい者水泳を見たのは今回が初めてだというが、実際に見ていると健常者と変わらないくらい上手で速く、驚いたそうだ。今回のボランティアは、「正直障がいと聞くとちょっと遠い存在に感じていたのですが、こうやって関わってみると別に遠いということは無かったです。明るい人ばかりで元気をもらいました。」(岡崎さん)「たとえば、子供たちが普通に手話で会話をしていたのですが、いま授業で手話を習っているので純粋にすごいなと思いました。」(中根さん)と振り返るように、普段あまり関わることのない「障がい者スポーツ」に触れたことは良い経験になったようだ。2人のようにボランティアとして、または観客として「障がい者スポーツ」に触れることは必ず良い刺激をもたらしてくれるだろう。

(左から岡崎優里奈さん、中根諒香さん)

 

この取材では、高みを目指す選手とそれを支える方々の両方に注目することが出来た。多くの選手が目指す東京パラリンピックが盛り上がるためには、選手の努力も必要だが、それ以上に多くのサポートが必要になってくる。初めて障がい者水泳を見たという2人のボランティアスタッフのように何らかの形で、一人でも多くの人が「障がい者スポーツ」に触れ、それを盛り上げていく一員になっていくことを願いたい。

広報インターン 伊藤 史織 (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳〜関東大会〜

 

2017年6月18日、東京都多摩障害者スポーツセンターで第31回関東身体障がい者水泳選手権大会が行われた。

参加人数は234名と過去最高の数だ。今回の大会では大会記録が38、大会新記録が47も叩き出され、高いレベルの戦いが繰り広げられた。

 

十人十色水泳

時計の針が午前10時を指したと同時に、プログラムナンバー1番の女子400メートル自由形1組目の選手紹介のアナウンスが会場に響き渡った。スタート台に乗る選手たち。身体障がい者水泳のスタートの仕方は選手によって異なる。ただ、静止状態でスタートすることが義務付けられている。立った状態でスタートする選手もいれば、介助者に体を支えてもらう選手、水中からスタートする選手もいる。同じスタートラインに並んでいても障がいの種類、不自由な部位が異なるので泳ぎ方もスピードもかなりのばらつきがある。しかし、目指すゴールは皆同じだ。400mにもなると最後まで泳ぎきれない選手もいる。個人が持てる最大限の力を目の前にある1本のレースに込めるのだ。

        

スタートの合図と同時に飛び込む選手 バタフライで水中に上がってくる 選手

 

 

学校と水泳。両立を頑張る川辺多恵選手

開会式で選手宣誓をした川辺多恵さんは「今日の種目を短水路で泳いだのは初めてだったんですけど、ベストを出すことができて素直に嬉しいです」と試合を振り返る。川辺選手は日本代表選手の“育成”と“強化”のチームがある中、育成Bチームに指定されている。歯科衛生士の専門学校に通いながら、週8回(朝練習2回、午後練習6回)水泳の練習に励む。今のチームより1つ上の育成Aにあがるためには、100mで1秒縮める必要がある。「後半の50mで失速してしまわないように、次の大会までしっかり泳ぎこみたいです」といき込んだ。

選手宣誓をする川辺多恵選手   パラッシーを持つ川辺多恵選手

 

 

選手を支えるタッパー

43のプログラムが順々に繰り広げられていく中、私が注目したのは視覚障がいがある選手にターンのタイミングを知らせる“タッパー”。身体障がい者水泳の大会に足を運んだことがある人なら、1度は目にしたことがあるだろう。しかし、存在には気づいていても詳しい役割は知らないという人は多いのではないだろうか。そこで今回は、富田宇宙さんのタッパーを務めている風間みどりさんに詳しく教えてもらった。タッパーは全盲の選手には必ずつき、弱視の選手の場合はレベルや個人の感覚によってつくかどうかが決まる。もし、全盲の選手にタッパーがつかなかった場合はその選手が失格になる。ターンのタイミングを視覚的につかむのが難しい選手のためにタッパーが選手の体に棒で触れることで感覚的にタイミングを知らせる。(このことをタッピングという)また、タッパーが棒でたたいていい回数は決まっている。2回目までは許されるが3回振りかざしてしまうと選手が失格になってしまう。ストップウォッチを首からかけてタッピングを行うのも違反行為だ。レース中にコーチングをしたとみなされる。ただ選手の“壁” となって、レースを裏から支えるなくてはならない大切な存在である。風間さんは「タッパーをするようになってから、自分もレースに参加しているんだという気持ちが増して楽しい」と笑顔で話してくれた。富田選手のタッパーは現在9名いて、大会ごとにスケジュールを組んでいる。親族、コーチだけでなく、少しでも興味がある人なら誰でもできるそうだ。普段の練習でタイミングをつかみ、本番に挑む。選手個々や泳法によってタイミングやたたき方が異なるので、事前の準備が大切になってくる。是非興味のある方は挑戦してほしい。よりパラスポーツを身近に感じることができるだろう。

          

タッピング棒を持つタッパー  タッピングをするタッパー

世界に羽ばたく森下友紀選手

女子200m個人メドレーで自身が持つ大会記録を更新した森下友紀選手は今後の目標について「(今日の午後にある50mバタフライでは)ドイツの遠征で100mバタフライに出るので、そこに繋がるように意識して泳ぎたい」と力強く話してくれた。秋に行われる世界選手権は高地で行われるため、場所に順応する体作りが必要になってくる。厳しい練習を乗り越え、世界で活躍してくれることを期待したい。

レース後にインタビューを受ける森下選手

 

これからのパラスポーツ

森下選手のように世界に羽ばたく若い世代の選手が続々と頭角を現している。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本全国がスポーツであつくなっている。しかし、まだまだパラスポーツへの関心が低いのは事実である。もっと多くの人にパラスポーツの魅力を知ってもらい、国籍、性別、障がいの有無を超え皆が1つになり、同じゴールに向かってあつくなりたい。

平泳ぎで息継ぎをする選手     タッピングをする風間さん

 

 

広報インターン生 前田さつき (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~九州大会~

真夏のような日差しが照りつけた6月18日、佐賀県総合運動場内水泳場にて第28回九州障がい者水泳選手権大会が開催された。多くの協賛の支えのもと、クラスや年代の異なる様々な選手がそれぞれの目標を持って挑んだこの大会は、大いなる盛り上がりを見せた。

16年の日本身体障がい者水泳選手権大会、ジャパンパラ水泳競技大会でともに200m個人メドレー、100m背泳ぎの二冠を達成した実績を持つ保田星願選手。
東京パラリンピックでの活躍が期待される19歳だ。今大会では100m自由形(S9)、100m背泳ぎ(S9)、50m自由形(S9)の3種目に出場。最も力を入れてきたという100m背泳ぎは1分12秒39。「スピード系の練習をしてきて前半は良かったが(35秒53)、後半その分体力がなくなってしまった。」と100分の6秒ベストに届かなかった悔しさをあらわにした。

東京パラリンピックにむけ、同じく期待の前田一成選手。今大会100m自由形(S10)、50mバタフライ(S10)、50m自由形(S10)に出場し、すべてで自己ベスト、大会新記録をたたき出した。調子は絶好調。100m自由形は1分3秒17と自己ベストから1秒ほどタイムを縮め、「自分でもびっくりしているぐらいです」と笑顔を見せた。保田選手とは高校生のときから合宿などでも一緒になり、「クラスは違うけど良いライバル」。レース後にはハイタッチを交わす姿も見られ、仲の良さをうかがわせた。

ジャパンパラにむけ、両選手ともに目標は「日本新記録」と口を揃えた 。
これからもお互い切磋琢磨しつつ、この障がい者水泳を盛り上げる若きポープに
期待したい。

 

一方、身体障がい者水泳を長い間引っ張ってきたベテランの梶原紀子選手。96年のアトランタパラリンピック50m平泳ぎ(SB4)で金メダルを獲得した実力者だ。今大会は体調を崩し練習が思うようにできなかったことで体が重かったという。
しかし「ジャパンパラの標準タイムは切れたので必要最低限のことはできた」と振り返った。

そんな梶原選手にとって欠かせないのが車椅子だ。2020年の東京パラリンピックの影響で障がい者やパラスポーツに対する意識は徐々に高まってきているが、それでもその車椅子によってまだまだ不自由を感じることが少なくないという。たとえば、試合の行われる会場の問題だ。プールの外にはスロープが設置されていても、プールのなかに段差があるなど、パラスポーツを行える会場は限られる。

パラスポーツに対して多くの人はどのようなものかはほとんど知らず、少し怖いというイメージさえ持っているのではないだろうか。私もそうであった。
しかし、ぜひ一度会場に足を運んでみてほしい。選手たちはみんな私 たちと少しも変わらずただひたむきにベストを目指しレースに挑んでいる。障がいを持っていることを忘れさせるくらいその顔はいきいきとした表情そのものだ。この雰囲気を肌で感じ、パラスポーツがより多くの人に身近な存在になってくれることを願う。

 

 

広報インターン生 太田彩恵 (慶應スポーツ新聞会)