2017パラ水泳~近畿大会~

7月2日和歌山県秋葉山公園県民プールにおいて第28回近畿身体障がい者水泳選手権大会が行われた。近畿大会は毎年開催地が異なるが、和歌山県で行われたのは今回が初となる。

ベルリンで7月上旬に世界大会 があったこともあり、リオ デジャネイロパラリンピックを経験した選手の出場は少なかった。しかし、その中でリオ出場の笠本明里は1レース目となる100m自由形で自身も納得の泳ぎを見せ大会新記録を打ち立てる。

神戸楽泳会のメンバーとして出場したフリーリレー・メドレーリレーでもその実力を発揮し、1位フィニッシュに貢献した。

また、国際大会の経験豊富な江島大佑も出場。50m自由形と100m自由形で大会新記録を更新してみせた。

今大会では身体障がいを持つ選手だけでなく、聴覚障がいをもつ選手も出場した。世界大会に出場した経験をもつ中川裕介は100m平泳ぎで大会新記録を更新するも、「スタートの浮き上がりに失敗して自己記録は打ち破れなかった」と悔しさを見せた。

和歌山県で開催されるのは初めてということで運営の難しさもあったという今大会。しかし新たな場所での開催は裾野の広がりが進んでいる証であるともいえるだろう。さらに、開催された秋葉山公園県民プールは国体の開催によって4年前に改修されたばかりの新しいプールで、設備も非常に充実している。レッジやバックプレートが導入されているだけでなく、スタート時にプールサイドのライトが発光するようになっている。聴覚に障害のある選手はスタートを見ることでしか判断できず、スターターが持つ光るピストルを見なければならない。しかし、プールサイドにライトがあれば見ることが必要なくなり、スタートがしやすくなるのだ。「記録が出やすい」と中川選手も笑顔を見せた。

笠本・中川両選手も世界レベルの施設と認めるこのプールでの泳ぎが好記録に繋がることは選手の励みになっている。初めての試みは多くのメリットを産みだした一方で、まだまだ問題はあると近畿身体障がい者水泳連盟の杉山会長は指摘する。人々の持つ障がいは様々であるのに、柔軟な対応ができていなかったことを挙げて自分たちのやり方とずれがあったという。来る2020年に向けてマスコミでの注目度が上がり、選手たちが「アスリート」としてとらえられつつある中で2020年のその先を見据えることの重要さにも触れ、「競技人口の高齢化は止まりつつあるけれども、もっと競技人口が増えてほしい」とも話した。

競技者が2020年とその先へ挑戦し続けていくのであれば、競技者だけでなく周りの我々も2020年に向けて挑戦していかなければならないと気づかされた取材だった。

 

 

 

広報インターン生 尾崎崚登 (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~中部大会~

真夏の暑さに包まれた7月2日、愛知県口論義運動公園プールにて第24回中部障がい者水泳選手権大会が行われた。

 

今大会は他の地方大会とは異なり、日本知的障がい者水泳連盟の公認大会となっているため知的障がいを抱えた選手も多く出場した。

そのため総参加者数は340人にも及び、坂倉航季、津川拓也、中島啓智、林田泰河、宮崎哲らリオデジャネイロオリンピック日本代表選手も5人出場した。

今大会で最も会場を沸かせたレースは、午後に行われた男子200mバタフライだ。髙柳春貴選手が2分19秒78で泳ぎ切ると、続いて村上舜也選手が2分20秒93でゴールする。同じレースに出場した2人の選手が、2年ほど破られていなかった2分22秒17という日本記録を更新したのだ。この結果がアナウンスされると、会場内はこの日一番の大きな拍手に包まれた。

水泳というスポーツはリレーを除けば個人競技であるが、選手同士の結束は固い。実際に会場では小さな子供から年配の方まで、様々な障がいを抱えた選手たちが各々の目標を持ってレースに臨み、レース後にはプールサイドでお互いを鼓舞し合う様子が多々見受けられた。成嶋徹選手と馬場俊明選手は男子50m自由形の同じ組に出場し、ワンツーフィニッシュを飾った。2人は同じ会社の水泳部に所属しており、お互いに良きライバルとして刺激し合いながら練習を重ねている。馬場選手は「自由形に関しては自己ベストを出せた」と振り返った。この結果もお互いに切磋琢磨し合える仲間がいたからこそ出せたものなのだろう。

(左から成嶋選手、馬場選手)

 

やはり2020年に東京でパラリンピックが開催されることは、多くの選手たちにとってのモチベーションとなっているようだ。バタフライに出場した羽賀昭徒選手は「目標はやっぱり東京パラリンピック」と力強く話した。また、一緒にインタビューに応じた近藤薫選手は「まずは育成Bに上がりたい」と将来を見据えた目標を語った。

 

(左から後藤選手、羽賀選手、近藤選手)

注目したのは、女子100mバタフライ1組と女子200m個人メドレーに出場した松井ゆずか選手。彼女は現在、育成A選手に指定されており、今後のパラリンピックに向けても期待の存在だ。今大会での結果ついて「最近はテスト週間であまり泳げていなくて、タイムもそんなに満足のいく結果ではなかったので悔しい気持ちでした。」と振り返った。学業と水泳の両立に時には苦戦しながらも、高校の部活動で週4回の練習に励んでいる。今後の目標は今年12月に行われるアジアユース大会に出場し決勝に残ること、そしてできればメダルも獲得することだという。そのためにまずは今大会での「100mのバタフライで、後半にすぐ失速してしまう」という反省点を改善していきたいところだ。松井選手の区分「S9」はリオデジャネイロパラリンピック日本代表選手である一ノ瀬メイや森下友紀など多くの実力者が揃っている。そのレベルの高い争いの中で、日本を代表する選手になっていって欲しい。

 

また今回は、選手だけでなく大会を運営する方々にも注目した。

今大会で選手の表彰をずっと行っていたのは中部障がい者水泳連盟会長の西口住伸さんだ。表彰する選手を招集し、一人一人に優しく声を掛けながらメダルを手渡しする光景が印象的だった。西口会長は今もシニア選手として現役を続けながら、会長としての仕事も行っている。今大会は参加者が多かったこともあり時間が少しずつ遅れてしまうこと、また会場内が暑かったことが特に大変だったと振り返った。運営面として今後強化していきたいのは日本障がい者水泳連盟に公認される競技役員を育成すること。もちろん選手だけでなく西口会長も「2020年東京パラリンピックにぜひとも中部の選手も出場してほしい」と東京パラリンピックを見据えている。そのためには競技役員の育成など、運営面の強化も欠かせないのだ。

 

運営を支えているのは連盟や競技役員の方々だけではない。会場では多くのボランティアスタッフが活動している。学校で福祉を学んでいるという岡崎優里奈さん、中根諒香さんは、授業過程の一環としてこのボランティアに参加していた。岡崎さんは大会受付、中根さんはタイムなどを表示する機械を動かすという活動を行っていた。2人とも障がい者水泳を見たのは今回が初めてだというが、実際に見ていると健常者と変わらないくらい上手で速く、驚いたそうだ。今回のボランティアは、「正直障がいと聞くとちょっと遠い存在に感じていたのですが、こうやって関わってみると別に遠いということは無かったです。明るい人ばかりで元気をもらいました。」(岡崎さん)「たとえば、子供たちが普通に手話で会話をしていたのですが、いま授業で手話を習っているので純粋にすごいなと思いました。」(中根さん)と振り返るように、普段あまり関わることのない「障がい者スポーツ」に触れたことは良い経験になったようだ。2人のようにボランティアとして、または観客として「障がい者スポーツ」に触れることは必ず良い刺激をもたらしてくれるだろう。

(左から岡崎優里奈さん、中根諒香さん)

 

この取材では、高みを目指す選手とそれを支える方々の両方に注目することが出来た。多くの選手が目指す東京パラリンピックが盛り上がるためには、選手の努力も必要だが、それ以上に多くのサポートが必要になってくる。初めて障がい者水泳を見たという2人のボランティアスタッフのように何らかの形で、一人でも多くの人が「障がい者スポーツ」に触れ、それを盛り上げていく一員になっていくことを願いたい。

広報インターン 伊藤 史織 (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳〜関東大会〜

 

2017年6月18日、東京都多摩障害者スポーツセンターで第31回関東身体障がい者水泳選手権大会が行われた。

参加人数は234名と過去最高の数だ。今回の大会では大会記録が38、大会新記録が47も叩き出され、高いレベルの戦いが繰り広げられた。

 

十人十色水泳

時計の針が午前10時を指したと同時に、プログラムナンバー1番の女子400メートル自由形1組目の選手紹介のアナウンスが会場に響き渡った。スタート台に乗る選手たち。身体障がい者水泳のスタートの仕方は選手によって異なる。ただ、静止状態でスタートすることが義務付けられている。立った状態でスタートする選手もいれば、介助者に体を支えてもらう選手、水中からスタートする選手もいる。同じスタートラインに並んでいても障がいの種類、不自由な部位が異なるので泳ぎ方もスピードもかなりのばらつきがある。しかし、目指すゴールは皆同じだ。400mにもなると最後まで泳ぎきれない選手もいる。個人が持てる最大限の力を目の前にある1本のレースに込めるのだ。

        

スタートの合図と同時に飛び込む選手 バタフライで水中に上がってくる 選手

 

 

学校と水泳。両立を頑張る川辺多恵選手

開会式で選手宣誓をした川辺多恵さんは「今日の種目を短水路で泳いだのは初めてだったんですけど、ベストを出すことができて素直に嬉しいです」と試合を振り返る。川辺選手は日本代表選手の“育成”と“強化”のチームがある中、育成Bチームに指定されている。歯科衛生士の専門学校に通いながら、週8回(朝練習2回、午後練習6回)水泳の練習に励む。今のチームより1つ上の育成Aにあがるためには、100mで1秒縮める必要がある。「後半の50mで失速してしまわないように、次の大会までしっかり泳ぎこみたいです」といき込んだ。

選手宣誓をする川辺多恵選手   パラッシーを持つ川辺多恵選手

 

 

選手を支えるタッパー

43のプログラムが順々に繰り広げられていく中、私が注目したのは視覚障がいがある選手にターンのタイミングを知らせる“タッパー”。身体障がい者水泳の大会に足を運んだことがある人なら、1度は目にしたことがあるだろう。しかし、存在には気づいていても詳しい役割は知らないという人は多いのではないだろうか。そこで今回は、富田宇宙さんのタッパーを務めている風間みどりさんに詳しく教えてもらった。タッパーは全盲の選手には必ずつき、弱視の選手の場合はレベルや個人の感覚によってつくかどうかが決まる。もし、全盲の選手にタッパーがつかなかった場合はその選手が失格になる。ターンのタイミングを視覚的につかむのが難しい選手のためにタッパーが選手の体に棒で触れることで感覚的にタイミングを知らせる。(このことをタッピングという)また、タッパーが棒でたたいていい回数は決まっている。2回目までは許されるが3回振りかざしてしまうと選手が失格になってしまう。ストップウォッチを首からかけてタッピングを行うのも違反行為だ。レース中にコーチングをしたとみなされる。ただ選手の“壁” となって、レースを裏から支えるなくてはならない大切な存在である。風間さんは「タッパーをするようになってから、自分もレースに参加しているんだという気持ちが増して楽しい」と笑顔で話してくれた。富田選手のタッパーは現在9名いて、大会ごとにスケジュールを組んでいる。親族、コーチだけでなく、少しでも興味がある人なら誰でもできるそうだ。普段の練習でタイミングをつかみ、本番に挑む。選手個々や泳法によってタイミングやたたき方が異なるので、事前の準備が大切になってくる。是非興味のある方は挑戦してほしい。よりパラスポーツを身近に感じることができるだろう。

          

タッピング棒を持つタッパー  タッピングをするタッパー

世界に羽ばたく森下友紀選手

女子200m個人メドレーで自身が持つ大会記録を更新した森下友紀選手は今後の目標について「(今日の午後にある50mバタフライでは)ドイツの遠征で100mバタフライに出るので、そこに繋がるように意識して泳ぎたい」と力強く話してくれた。秋に行われる世界選手権は高地で行われるため、場所に順応する体作りが必要になってくる。厳しい練習を乗り越え、世界で活躍してくれることを期待したい。

レース後にインタビューを受ける森下選手

 

これからのパラスポーツ

森下選手のように世界に羽ばたく若い世代の選手が続々と頭角を現している。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本全国がスポーツであつくなっている。しかし、まだまだパラスポーツへの関心が低いのは事実である。もっと多くの人にパラスポーツの魅力を知ってもらい、国籍、性別、障がいの有無を超え皆が1つになり、同じゴールに向かってあつくなりたい。

平泳ぎで息継ぎをする選手     タッピングをする風間さん

 

 

広報インターン生 前田さつき (慶応スポーツ新聞会)

2017パラ水泳~九州大会~

真夏のような日差しが照りつけた6月18日、佐賀県総合運動場内水泳場にて第28回九州障がい者水泳選手権大会が開催された。多くの協賛の支えのもと、クラスや年代の異なる様々な選手がそれぞれの目標を持って挑んだこの大会は、大いなる盛り上がりを見せた。

16年の日本身体障がい者水泳選手権大会、ジャパンパラ水泳競技大会でともに200m個人メドレー、100m背泳ぎの二冠を達成した実績を持つ保田星願選手。
東京パラリンピックでの活躍が期待される19歳だ。今大会では100m自由形(S9)、100m背泳ぎ(S9)、50m自由形(S9)の3種目に出場。最も力を入れてきたという100m背泳ぎは1分12秒39。「スピード系の練習をしてきて前半は良かったが(35秒53)、後半その分体力がなくなってしまった。」と100分の6秒ベストに届かなかった悔しさをあらわにした。

東京パラリンピックにむけ、同じく期待の前田一成選手。今大会100m自由形(S10)、50mバタフライ(S10)、50m自由形(S10)に出場し、すべてで自己ベスト、大会新記録をたたき出した。調子は絶好調。100m自由形は1分3秒17と自己ベストから1秒ほどタイムを縮め、「自分でもびっくりしているぐらいです」と笑顔を見せた。保田選手とは高校生のときから合宿などでも一緒になり、「クラスは違うけど良いライバル」。レース後にはハイタッチを交わす姿も見られ、仲の良さをうかがわせた。

ジャパンパラにむけ、両選手ともに目標は「日本新記録」と口を揃えた 。
これからもお互い切磋琢磨しつつ、この障がい者水泳を盛り上げる若きポープに
期待したい。

 

一方、身体障がい者水泳を長い間引っ張ってきたベテランの梶原紀子選手。96年のアトランタパラリンピック50m平泳ぎ(SB4)で金メダルを獲得した実力者だ。今大会は体調を崩し練習が思うようにできなかったことで体が重かったという。
しかし「ジャパンパラの標準タイムは切れたので必要最低限のことはできた」と振り返った。

そんな梶原選手にとって欠かせないのが車椅子だ。2020年の東京パラリンピックの影響で障がい者やパラスポーツに対する意識は徐々に高まってきているが、それでもその車椅子によってまだまだ不自由を感じることが少なくないという。たとえば、試合の行われる会場の問題だ。プールの外にはスロープが設置されていても、プールのなかに段差があるなど、パラスポーツを行える会場は限られる。

パラスポーツに対して多くの人はどのようなものかはほとんど知らず、少し怖いというイメージさえ持っているのではないだろうか。私もそうであった。
しかし、ぜひ一度会場に足を運んでみてほしい。選手たちはみんな私 たちと少しも変わらずただひたむきにベストを目指しレースに挑んでいる。障がいを持っていることを忘れさせるくらいその顔はいきいきとした表情そのものだ。この雰囲気を肌で感じ、パラスポーツがより多くの人に身近な存在になってくれることを願う。

 

 

広報インターン生 太田彩恵 (慶應スポーツ新聞会)

 

2017パラ水泳 ~中四国大会~

5月21日、広島市心身障害者福祉センターにて第23回中国四国身体障害者水泳選手 権大会が行われた。

3月の記録会後初となる国内大会であったこの大会には、中国四国各県のほか全国から83名が参加。2017年強化・育成指定選手も出場した。

100m背泳ぎ(SB7)に出場した強化A指定の中村智太郎選手は、2週間の高地合宿を終えた疲労から状態があまり良くなかった中、前向きに試合に挑み「タイムは悪くなかった」と振り返った。

強化B指定の江島大佑選手は、50m自由形(S7)、100m自由形(S7)に出場。普段はバタフライや背泳ぎを専門としているが、持ち味の前半から積極的に攻める泳ぎで50m自由形では32秒12の好タイムを記録した。

育成S指定選手からは、藤原光里選手、岡部歩乃佳選手、中道穂香選手が出場。

藤原選手は100m背泳ぎ(S8)で1分40秒35の大会新記録をマーク。しかし、100m自由形(S8)の1分19秒74という結果は、自由形を専門としている藤原選手としては課題が残るものだった。

岡部選手、中道選手は共に伊予かんえい会に所属する高校2年生。同じ「ほのか」という名前を持ち、「運命的なものを感じる」(岡部選手)という二人は普段から仲が良く、競技の上ではライバルとしてお互いに刺激し合っている。この大会では100m背泳ぎ(S9)に揃って出場。納得のいくタイムではなかったものの、レース間隔が短く体力的に厳しい中、力強い泳ぎを見せた。岡部選手は100mバタフライ(S9)で1分20秒93の大会新記録をマークしたが、自身では「(1分)20秒を切れなかったのが悔しい」と厳しい評価を下した。中道選手も50m自由形(S9)で34秒97の大会新記録を出したものの、「反省ばかり」と目標の高さをうかがわせた。

さまざまな選手が異なる目標、異なる目的で出場する地方大会。しかし、練習を重ね試合に臨むからにはベストを尽くしたい気持ちはみな同じだ。互いに切磋琢磨しながら日本の障害者水泳を盛り上げていってほしい。

 

広報インターン生 鈴木優子 (慶応スポーツ新聞会)

2016ジャパンパラ水泳競技大会観戦記

 

7月18日・19日、横浜国際プールにて行われた、2016ジャパンパラ水泳競技大会。全国から精鋭が集まる今大会にはたくさんの観客が詰めかけ、会場は熱気に包まれた。IMG_6804

両日とも午前に予選、午後に決勝が行われたうえ、2日連続の出場となる選手も多かった。しかし、どの選手も疲れを感じさせず、力強い泳ぎを披露。大会記録や日本記録、アジア記録が数多く樹立され、そのたびに歓声が飛び交った。リオデジャネイロ・パラリンピックに向け最後の大会となる今大会には、日本代表選手19名も出場。圧巻の泳ぎを見せた。

代表チームのキャプテンを務める山田拓朗選手は、50m自由形(S9)と100m自由形(S9)で日本新記録を樹立。北京・ロンドンパラリンピックでは惜しくもメダルを逃したが、リオでのメダル獲得に向け着実に力をつけてきた。確かなその泳ぎで、チームを引っ張っていくに違いない。

同じく北京・ロンドンの経験がある木村敬一選手も、100mバタフライ(S11)で大会記録を更新する活躍を見せた。ロンドンでは同種目で銅メダル、100m平泳ぎで銀メダルを獲得。リオでの泳ぎには世界中の注目が集まる。子供の頃から様々なスポーツに取り組んできたという木村選手。全盲である彼にとって決して簡単なことではなかったが、専用の器具を使ってスキーを楽しんだ幼少時代。自転車にも乗り、地面の形を覚えることで操縦をした。世界を制す木村選手の強さは、そんなアクティブな生活の中で培われたのかもしれない。

知的障がいを持った選手は数多い。その中で、津川拓也選手は100m背泳ぎ(S14)で自己ベストと同時に大会新記録をマークし、優勝。リオに向けて『パラリンピックの出場は2回目なので、メダルを目指して頑張ります』と意気込んだ。

また、今大会で特に注目を集めたのが成田真由美選手。45歳にして、50m自由形(S5)と200m自由形(S5)の2種目で日本記録を塗り替えた。アトランタ大会から北京大会まで、金15個を含む計20個のメダルを獲得している成田選手。リオ大会もまた、彼女の圧倒的な強さに期待が懸かる。

IMG_6815一方で、パラリンピック初出場となる若手選手の活躍も光る。トヨタ自動車のCMでお馴染み、大学2年生の一ノ瀬メイ選手。50m自由形(S9)、200m個人メドレー(SM9)、100mバタフライ(S9)に出場し、全種目を制した。

IMG_6821代表チーム最年少の17 歳、池愛里選手も同じく全種目で優勝。200m個人メドレー(SM10)で日本新記録、100m平泳ぎ(SB9)、100m背泳ぎ(S10)で大会新記録を樹立した。しかし、自己評価は厳しい。得意の100m背泳ぎでは予選から決勝でタイムを落としてしまい、『練習でできていることができなかった』と悔しさをにじませた。178cmの長身を生かした泳ぎが彼女の魅力。リオでは7種目に出場予定だが、全ての種目で自己ベスト、100m背泳ぎではメダルを目指す。

様々な障害、様々な経験。それぞれのバックグラウンドを持った選手たちが、同じ舞台で輝ける。それが、パラ水泳の魅力。固い意志を胸に世界に挑む彼らは、間違いなく日本の誇りだ。

 

記:広報インターン 鈴木 優子(慶應義塾大学慶應スポーツ新聞会)

中部大会観戦記

 

7月3日、第23回中部障がい者水泳選手権大会が愛知県口論議運動公園プールで行われた。この大会には、リオ・デ・ジャ%e4%b8%ad%e9%83%a8%ef%bc%91ネイロパラリンピック代表に内定した選手が4名出場。それぞれ圧巻の泳ぎを見せ、会場を大いに沸かせた。代表選手の他にも、好記録を残そうと数多くの選手がエントリーし、計128組ものレースが行われた。随所で熱戦が繰り広げられた今大会は盛況のうちに閉幕した。

 

まず初めに会場をどよめかせたのは、女子400m自由形に出場した北野安美紗(S14/個人)だ。スタートに成功し序盤から独走態勢に入ると、最後までスピードは衰えることはなく、なんと「M3」(*)における大会新記録のタイム(4分58秒45)でフィニッシュ。代表選手ではない北野だが、圧巻の泳ぎで存在感を放った。

続いて男子400m自由形には、リオパラリンピック代表選手の中島啓智(SM14/花見川SC)が登場。圧倒的なスピードでフィニッシュすると、4分17秒65の「M4」(*)における日本新記録を叩き出した。目標タイムを『4分20秒以内』に設定していたという中島は、この結果に満足した表情を見せた。このレースでは、『300m以降も体力がもった』ことが功を奏し、好タイムにつながったと振り返った。次の種目、女子200m個人メドレーでは同じくリオパラリンピック代表選手の森下友紀(SM9/千葉ミラクルズ)が登場した。得意のバタフライでタイムを伸ばした森下は、SM9における大会新記録(2分56秒88)を樹立。しかし本人は、この記録に満足のいかない表情を見せた。『後半はバテてしまって、スピードを出すことが出来ませんでした。ちょっともどかしいなと。本当はもっと良いタイム、54秒くらいは出したかったなという気持ちがあります』。この大会で得た悔しさを胸に、今後更なる躍進を見せてくれることを期待したい。

午前の部の後半に行われた男子50m平泳ぎでは、廣田真一(SB14/大阪およごう会)が出場。リオパラリンピック代表選%e4%b8%ad%e9%83%a8%ef%bc%92手の廣田には、他を圧倒する泳ぎが期待されたが、村松諒(SB14/ぺんぎん村)に競り負けまさかの2位に終わった。レース後、廣田は『悔しい』と心境を率直に吐露した。『モチベーションを上手く保てなかった』ことが敗因となってしまったと振り返り、今後はメンタル面の改善を施すことを誓った。

 

 午後の部の種目である男子200m自由形と男子100m自由形に出場したのは、4名の代表選手のうち最後に登%e4%b8%ad%e9%83%a8%ef%bc%93場した坂倉航季(S14/個人)だ。『待ち時間が長く、体が思うように動かなかった』という坂倉だが、どちらの種目においても素晴らしい泳ぎを披露し、好タイムを記録した。パラリンピックに向けて、『メダルを取れるか分からないが、ベストを尽くして頑張りたい』と語った。

 

リオパラリンピックを控え、その代表選手の活躍により、大きな盛り上がりを見せた今大会。彼らのパフォーマンスは、他の選手にも刺激を与えたはずだ。7月17、18日には横浜国際プールにて2016ジャパンパラ水泳競技大会が行われる。この大会においても、今大会のような熱戦が繰り広げられることを期待したい。

注記:第23回中部障がい者水泳選手権大会のプログラムにある障害区分の表記は以下の通りです。

障害区分

S1~S10:肢体不自由、S11~13:視覚障害、

S15:聴覚障害、M1~M6:知的障害者

知的障がい者クラス分け ( S14 )

M1:9才以下、M2:10~12才以下、M3:13~15才以下、M4:16~18才以下

M5:19~34才以下、M6:35才以上

記:広報インターン 小澤 光市(慶應義塾大学慶應スポーツ新聞会)

九州大会観戦記

2016年6月12日。朝からしとしとと雨が降りしきる中、大分県佐伯市市民総合プールにて九州大会が開催された。

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本大会はジャパンパラの選考会として開催され、基準タイムを超えた選手はジャパンパラの出場権を獲得する。地方大会といえども138名の選手が出場し、多くの応援団も来場し、会場は大盛況を見せた。

 

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選手宣誓の様子

全員が同じスタートラインではない。障がい者競技の選手は一人一人に異なる障がいがある。その固有の障がいの中で公正に競技を行うために、「クラス分け」を行う。これは選手達の泳ぎや実際に診察することによって行われ、同程度の障がいと診断された選手同士が競えるように調整できるものである。クラス分けで、泳法ごとに9〜10段階に分けられる。例えば平泳ぎで身体障がい者の場合、クラスはSB1からSB9までの9段階となり、数字が小さいほど重度の障がいとなる。それぞれに順位と記録、そしてジャパンパラへの出場権が与えられる。

 

クラス分け%e4%b9%9d%e5%b7%9e%ef%bc%93

一方で、視覚障がい者の場合も同様に、一人一人見え方は様々である。しかし、クラス分けを行うのではなく、「ブラックゴーグル」と呼ばれる視界だけでなく、光を完全に遮断するゴーグルを全員が装着する事で一人一人の選手の差を無くしている。この影響で、選手達は全く視界がない状態で泳ぐことになる。ここで問題になるのは「ターン」。視界がない状態でのターンは危険を伴う。これを解決するのが「タッピング」。介護者がターンの直前で先にスポンジがついた棒で選手の頭を叩いて「ターン位置の到来」を教える。

 

タッピング

しかしこのタッピングには技術が必要で、選手と息を合わせなければ成功しない。このタッピングで試合の記録が左右されることもある。%e4%b9%9d%e5%b7%9e%ef%bc%94

障がい者水泳の魅力を「陸上では自由に動く事が出来ないが、水中では手を動かせば動く事が出来るところ」と語ったのは1996年アトランタパラリンピックで金メダルを獲得した梶原紀子選手(SB4,S5ー福岡チャレンジャーSC)。ここ20年で1番変わったのは「認知度」。「アトランタ五輪ではメダル確実と言われている競泳陣はまさかのメダルなしで、一方パラでは8個の金メダルを獲得しました。そこくらいから障がい者水泳の認知度が段々高まっていったのかなって思います」(梶原)。

現在、日本全国を6ブロックに分けて地方大会を行っているが、その地方大会はさらに上位の大会、つまり、ジャパンパラ水泳競技大会や日本身体障がい水泳選手権大会に繋がっている。この為上を目指す選手達が大会に集結するようになった。当然選手達は切磋琢磨し、新たな高みへと駆け上る。このシステムが構築されてから日本の障がい者水泳のレベルは上昇した。

 

泳法 テクニック

健常者の水泳にはない障がい者水泳だからこその楽しさ、それは各選手が持っているテクニックだ。

平泳ぎを専門とする梶原選手は脚を使う事ができない。医者やコーチからは平泳ぎは脚で泳ぐものだから、出来ないと言われ続けていた。しかし、それでも続けたいと志願し、コーチ陣は「手だけでも進む平泳ぎ」を悩み抜いた末に考案した。「私も何百通りの泳ぎ方で泳がされたか覚えてないですけど、2年がかりくらいでようやく完成しました」(梶原)。まさに%e4%b9%9d%e5%b7%9e%ef%bc%95血反吐を吐く思いで生み出されたこの泳ぎ。脚を全く使ってないにもかかわらず驚くほどの推進力がある。このような「技術」は一人一人の選手が持っている。水泳が好きでたまらない気持ち。それに加えて一人一人の「自分だけの武器」を携えて試合に挑む。その勝負には目を奪われる。

また、障がい者水泳は幅広い年齢層の選手達が出場している。「ベストのタイムが出るように一生懸命練習してきた」と語ったのは福田果音選手(SB9,S9)。彼女はまだ10歳。本格的に大会に出場したのは今大会が初めてだ。しかし、初出場の大会で好成績を収めつつも、まだまだ上を目指す気持ちは一流選手と大差ない。このような若手選手も数多く出場した。この世代の選手は東京パラリンピックで活躍してくれるのは間違いない。

若手選手と、これまで日本の障がい者水泳を引っ張ってきたベテラン選手が同じ大会で切磋琢磨しあう環境が整っている。この状況が続いていけば、2020年にはこう呼ばれているだろう。

「水泳王国、ニッポン」と。

 

記:広報インターン 高橋廉太朗(慶應義塾大学慶應スポーツ新聞会)

第30回関東身体障がい者水泳選手権大会観戦記

 

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2016年6月11日、第30回関東身体障がい者水泳選手権大会が横浜国際プールで行われた。過去最多の選手が参加し、多くの大会新記録が樹立された。選手だけでなく、コーチや介助者も含めた全員が鼓舞し合う光景が多く見られ、温かみのある大会となった。

【さまざまな障がいがある選手たち】%e9%96%a2%e6%9d%b1%ef%bc%92

身体障がいには様々な種類があるため、障がいの種類や程度によってクラス分けがされ、同程度の障がいの選手同士でレースが行われる。そのため、足の力で泳ぐ選手もいれば逆に腕の力で泳ぐ選手もいる。また、障がいの種類によってスタートの仕方や折り返しの仕方も変わってくる。それぞれの選手がどのような障がいを抱えているかは一目でわからないことも多く、その点レースを見るのが難しいが、選手それぞれの強みを生かした、様々な泳ぎ方が一度に見られるのはとても面白い。

 

【タッピングバーを用いた視覚障がい者選手のターン

今大会には視覚障がいがある選手も多く出場した。視覚障がい選手は壁の位置を目で確認することができないため、写真のように介助者が折り返しの直前に棒で選手の体をたたくことがある。身体障がい者水泳ならではのこの光景に注目だ。

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【大会記録を更新!】

女子400m自由形・女子100m背泳ぎに出場し、100m背泳ぎで1分33秒37という記録で見事に大会記録を更新した鎌田美希(立教大学・S8)にインタビューを行った。彼女は生まれつき両膝から下がない。2014年のアジアパラリンピックにも出場するなど世界の舞台で活躍している。専門の400m自由形では2着に終わったものの、「100m背泳ぎでは中学生くらいから自己ベストが出ていなかったので、ベストが久しぶりに出て嬉しかったです。自信にはなりました」と話したうえで、今後に向けては「専門の400m自由形はまだ調子いい時のタイムに戻ってないのでジャパラ(ジャパンパラ水泳大会)に向けてタイムを伸ばせて行けたらなと思います」と話した。

 

記:広報インターン 伊藤 史織(慶應義塾大学慶應スポーツ新聞会)

東北大会観戦記

 

十人十色の努力の結晶が水面に輝いていた———。6月5日、宮城県利府町のセントラルスポーツ宮城G21プールで開催された「第26回東北身体障がい者選手権水泳競技大会」。各地区大会の中で最初に行なわれる本大会は、7月のジャパンパラ水泳競技大会、11月の日本身体障がい者水泳選手権大会の予選を兼ねた大会であり、参加標準記録を突破すればこの2つの大会に出場することができる。

 

先陣を切ったのは男子200m個人メドレーの大島茄巳琉(S10・栃木とびうお)。中学1年生ながら、大会記録に迫る力強い泳ぎを見せた。本人は「いいタイムは出てない」と納得はしていなかったものの、「水泳は楽しい」と笑顔で話%e6%9d%b1%e5%8c%97%ef%bc%91した。男子100m自由形の第2組に登場した冨樫航太郎 (S6・北海道身障SC)は「気持ちで持って行った」という泳ぎで大会新記録をマークした。しかし、「もうちょっと伸びると思った」と話し、これからの活躍に期待を抱かせてくれた。

 

 

%e6%9d%b1%e5%8c%97%ef%bc%92続いてインタビューしたのは男子50mバタフライに出場した三井隆汰 (S6・峰村PSS東京)。同じチームに所属する田中正幸 (S6)に惜しくも及ばず2位となったが、「ジャパンパラに向けて課題が見えてきた。自分の泳ぎをしていい結果が出るように努力していきたい」と語った。

 

最後に話を聞いたのは、大会の最後を飾る競技200mリレーで優勝した東京DACチームの山内七重(S8)、蔵重ゆかり(S15)両選手。第1泳者の増山一雄 (S21)の作った大きなリードを保っての勝利にホッとした様子だった。聴覚障がいは泳ぐということに支障がないように思えてしまうが、大きい不安を持って臨んでいるということが初めて分かった。

クラス分け 

種目ごとに選手が泳ぎ順位もつく。しかし、ほとんどの選手が金メダルを獲得している。参加人数が少なく、種目数が多いということもあるが、それ以上に障がいの種類や程度によってクラス分けされていることが大きな要因だ。そのクラスごとに順位を決めるため、金メダルを獲れる選手も増えてくる。それが選手のモチベーションになっているのかもしれない。ベテランの選手も多数見受けられるのも、「体力の限界まで楽しんでやりたい」という気持ちが強いからに違いない。各選手にフォーカスを当てると、同じランクに属していても障がいのある部位やその働きがそれぞれ異なるのがわかる。逆に素人目には同じ障がい%e6%9d%b1%e5%8c%97%ef%bc%93を持っているのにクラスが違う、選手たちを比較して障がいが軽そうな選手の方が実はクラスが上、ということがある。しかし実際泳ぎを見るとやはりスピードの差というものが出てくるものである。このように障がいの度合い、障がいのある部位が違うため、各選手の泳ぎ方には特徴というものが現れてくる。それが十人十色たる所以だ。

さらにこれらの地方大会では年齢別の区分けはない。経験と体力が大きく結果につながってくる。それでも小学生くらいの若い選手と還暦を超えているようなベテランの選手が同じプールで、時に対等に泳ぎ合う姿はパラ水泳特有なのかもしれない。

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今大会では大会新記録が41個更新された。時代が移りゆく中で新しい泳法の技術の進歩もあるが、大会に参加する選手が少しずつ成長していることも大きいだろう。今はまだ若い選手たちが、さらに伸びていき4年後に東京で歓喜の瞬間を迎えられたら嬉しい。選手たちのオンリーワンにも注目したうえで、この先を見ていきたいと思う。

 

記:広報インターン 尾崎 崚登(慶應義塾大学慶應スポーツ新聞会)